MellanoxスイッチとEmbrionix SFPタイプを利用したSDI to IPゲートウェイの設定について
前回の記事より関西テレビ放送様のカンテク2019でデモをさせていただきました構成について、弊社取扱のMellanoxスイッチとEmbrionix SFPベースのIP gatewayの設定方法について記載させていただきます。
また今回の構成に関しましてはIDEAL SYSTEMS JAPAN様(https://www.idealsys.com/jp/home)よりPhabrix QXを貸していただき本構成について実施しています。
今回の構成について
今回はMellanoxスイッチとEmbrionix SFPベースのIP gatewayの簡易的な設定方法のご紹介のため、下記のような構成で実施しています。
映像信号のフローは下記のようになっています。
1. Phabrix QXから以下の映像信号をSDIアウトからEmbrionix emSFP IP gatewayのencoderに出力
- Type:1.5G
- Resolution:1920x1080 (HD)
Frame: 59.94i
Mapping: YCbCr:422:10(10bit)
Gamut: 709(REC709)
2. Mellanoxスイッチに挿入しEmbrionix emSFP IP gatawayのencoderにSDIから入った映像をIPに変換し、Mellanoxスイッチ内部でルーティングされdecoderのIP gatewayでIPからSDIに変換
3. SDIに変換された映像信号をPhabrix QXのSDI inに入力
4. Phabrix QXに入力された映像信号をHDMI経由で外部モニタに出力
Mellanoxスイッチと Embrionix emSFP IP gatewayの設定について
今回、MellanoxスイッチとEmbrionix emSFP IP gatewayの設定について説明させていただくため、Phabrix QXの設定につきましては割愛させていただきます。
1. Mellanoxスイッチの設定について
今回、Embrionix emSFP IP gateway encoderは1/9ポート、Embrionix emSFP IP gateway decoderは1/11ポートに挿入しています。
なお、今回利用しています Embrionix IP gatewayは、SDI to IPとIP to SDIの製品となり、ポートスピードについて固定で設定する必要があり、本製品は10Gで固定するため、以下のコマンドにて1/9ポートと1/11ポートのスピードを設定し、ポートのステイタスについて確認します。
Embrionix IP gatewayの状態の確認としては、以下のコマンドにて状態の確認も可能となります。
また必要に応じて接続される機器の対応しているIGMPのversion、snooping、マルチキャストルーティングを有効にし、L2で実施する場合はクエリアを実行し、またL3で実施刷る場合はPIM-SMやSSMを実行することによりIGMPで管理が可能となります。
下記に主要な各コマンドについて記載させていただきます。
マルチキャストのルーティングを有効にする場合は、以下のコマンドを実行します。
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip multicast-routing
IGMPを有効にする場合は、以下のコマンドを実行します。
・IGMP version 2の場合
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip igmp snooping version 2
・IGMP version 3の場合
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip igmp snooping version 3
VLANに対してIGMP snoopingを有効にする場合は、以下となります。
(例としてVLAN10で有効にしています)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # vlan 10 ip igmp snooping
IGMPの未登録のマルチキャストトラフィックのフラッディング方法については以下のコマンドを実行します。
・特定のVLANのすべてのポートで未登録のマルチキャストトラフィックをフラッディングさせる場合
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip igmp snooping unregistered multicast flood
・未登録マルチキャストトラフィックを特定のVLANのmrouterポートにのみ転送する場合
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip igmp snooping unregistered multicast forward-to-mrouter-ports
IGMPのクエリアを動作させるコマンドは以下となります。
(例としてVLAN10 で有効にしています)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # vlan 10 ip igmp snooping querier
IGMP PIMを有効にする場合は以下のコマンドを実行します。
・PIMの有効
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # protocol pim
・PIMのSparseモードを有効にする
(例としてVLAN10で有効にする場合)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # interface vlan 10 ip pim sparse-mode
IGMPのmrouterをVLANの対象のインタフェースで作成するコマンドは以下となります。
(例として、VLAN10にアサインされているポート1/1をmrouterポートとした場合)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # vlan 10 ip igmp snooping mrouter interface ethernet 1/1
スイッチにRPの候補を作成するコマンドは以下となります。
(例としてVLAN10に対して232.0.0.0/8レンジのRPの候補を作成した場合)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip pim rp-candidate vlan 10 group-list 232.0.0.0/8
(Loopbackインタフェースに対して232.0.0.0/8レンジのRPの候補を作成した場合)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip pim rp-candidate loopback 0 group-list 232.0.0.0/8
スイッチにBSRの候補を作成するコマンドは以下となります。
(例としてVLAN10に対してBSRの候補を作成した場合)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip pim bsr-candidate vlan 10
(Loopbackインタフェースに対してBSRの候補を作成した場合)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip pim bsr-candidate loopback 0
PIM SSMを特定のマルチキャストアドレスで有効にした場合
(例として232.0.0.0/8でSSMを有効にしています)
switch-SN2100 [standalone: master] (config) # ip pim ssm range group-list 232.0.0.0/8
他にもIGMP、PIMコマンドはございますが、主要なコマンドについて記載をさせていただきましたが、構成の必要に応じてMellanoxのUser’s Guideを参照ただき、構成にあったコマンドの実行をお願いいたします。
2. Embrioixの設定をするためにemSETのdockerをインストール
弊社技術ブログのdockerでご紹介をいただきましたようにmgmt0ポートにIPアドレス、DNS、デフォルトゲートウェイを設定し、ntpを利用して時間を調整して、Embrionix/emsetのdockerをダウンロードし起動を実施します。
※ 今回は既にEmbrionix/emsetのdockerイメージはダウンロードし起動している状態とさせていただきます。
3. emSETの設定
Embrionix IP gatewayを設定するため、httpブラウザ経由にてemSETにアクセスを実施します。
なお今回はemSET経由での設定について記載をいたしますが、emSET経由でなくてもREST APIを利用し設定も可能となります。
なお、今回利用しているemSETのバージョンは4.00を利用し、emSETがサポートされているブラウザバージョンは以下となります。
emSETにアクセスし、ログインを実施します。
(今回のMellanoxスイッチのIPは、192.168.10.191/24となりますので、emSETにアクセスするにはhttp://192.168.10.191:8080となります。)
デフォルトのLogin name/Passwordは、以下となります。
Login nameはadmin
Passwordはadmin
emSETにログインが完了したら、Embrionix IP gatewayを検索するために、Discovery RangeにIPアドレスレンジを入力し(赤枠で囲っている箇所となります)、submitをクリックし構成を保存します。 他の構成については、基本的にはデフォルト構成で問題ございません。
※ Embrionixの初期のIPアドレスは、168.31.XXX/24、もしくは、10.(MACアドレスの第4オクテットの10進数). (MACアドレスの第5オクテットの10進数). (MACアドレスの第6オクテットの10進数)/24のどちらかになります。
例として、Embrionix IP gatewayのMACアドレスが40:A3:6B:A0:39;40だった場合は、A0:39;40を10進数に変換したIPアドレスとなるため、10.160.57.64/24という値になります。
Embrionix IP gatewayが検索されるとDevicesのタブをクリックすると、スイッチに挿入されているEmbrionix IP gatewayのIPレンジが問題なければ、対象のEmbrionix IP gatewayが表示されます。
※ 今回の例ではencoder(SDI to IP)のEmbrionix IP gatewayについては、168.39.200となり、decoder(IP to SDI)のEmbrionix IP gatewayについては、192.168.39.201となっています。
対象のEmbrionix IP gatewayをクリックすることによりステイタスの確認や設定の変更が可能となり、設定を変更する場合は、Embrionix IP gatewayを選択した状態で赤枠にて囲っているsetupをクリックすることによりsetupのモードに遷移します。
※ decoderの黄色三角の表示は、マルチキャストアドレスについてdefault設定のための表記となり、本執筆時に設定をしていない為、表示されています。
encoder側の設定は以下のようにDeviceタブの中に、Device、PTP、Locationと設定があります。
DeviceのDeviceについては、Embrionix IP gatewayのコントロールIPの設定となります。
本IPアドレスを利用し、emSETから設定、またはREST API経由で設定を実施します。
DeviceのPTPについては、PTPのモードやドメイン等の設定が可能な項目となります。
DeviceのLocationについては、ロケーションタグの設定やLLDPを有効/無効ができ、LLDPを有効にすればスイッチ上から接続ポートの確認が可能となります。
SignalsのFlowsについては、Video/Audio/Ancillaryの各PrimaryとSecondaryの送出項目についてソースIPやマルチキャストアドレス、ポート等各設定が可能となります。
SignalsのSDIについては、SDI to IPのエンコード時にAudioをどのチャネルにマップするかの設定が可能となります。
SignalsのReferenceについては、Frameのオフセットやline、pixelのアライメントの設定が可能となります。
また、本Embrionix IP gatewayについては、2チャンネルを持っており、チャネル毎に設定が可能となります。
decoder側の設定は以下のようにDeviceタブの中に、Device、PTP、Locationと設定があります。
DeviceのDeviceについては、Embrionix IP gatewayのコントロールIPの設定となります。
本IPアドレスを利用し、emSETから設定、またはREST API経由で設定を実施します。
DeviceのPTPについては、PTPのモードやドメイン等の設定が可能な項目となります。
DeviceのLocationについては、ロケーションタグの設定やLLDPを有効/無効ができ、LLDPを有効にすればスイッチ上から接続ポートの確認が可能となります。
SignalsのFlowsについては、Video/Audio/Ancillaryの各PrimaryとSecondaryの受信項目についてソースIPやマルチキャストアドレス、ポート等各設定が可能となります。
SignalsのSDIについては、IPで受信したAudioとチャネルのマッピングを設定する項目となります。
SignalsのReferenceについては、Frameのオフセットやline、pixelのアライメントの設定が可能となります。
SignalsのClean switchについては、Clean switchも対応しており、Clean switchのモードについての設定が可能となります。
簡易的には実行するにはencoderとdecoderでVideoフォーマット、Senderタイプ、マルチキャストアドレス、ポート番号、VLANやSDIとIPのマッピング、アライメントを設定することにより12G-SDI、6G-SDI、3G-SDIやHD、SDなどをencoder側でIPにエンコードし、decoder側でIPから対象の映像信号に出力することによって映像の出力が可能となります。
今回は、Phabrix QXを利用し、以下のようにカラーバーとバウンシングボックスを有効にして映像出力を実施しています。
MellanoxスイッチとEmbrionix emSFP IP gatewayのまとめ
今回はMellanoxスイッチとEmbrionix emSFP gatewayを利用した構成で設定と動作を記載させていただきました。特にSFPタイプのSDI to IP gatewayについては、今後のSDIからIP化の環境においてスイッチとセットで直ぐ環境構築が可能であり、既にMellanoxスイッチとEmbrionix emSFPでご利用されているお客様も多数いらっしゃいます。またご利用していただいている理由として、手軽に動作確認が可能であり、機器の部品点数が多くならず、そのために管理工数が削減できるなどのご意見もいただいております。上記のようにSDIからIP化していくなかでMellanoxスイッチも多数の引き合いを頂いておりますので、ご興味がございましたら是非弊社セールスまでお問い合わせをいただき、検証につきましてもご連絡をいただければと存じます。
また本記事を執筆するうえでアイディールジャパン様(https://www.idealsys.com/jp/home)よりPhabrix QXをお貸しいただく為に、ご協力をいただき有難うございます。