「抜けない」が正義だった現場と、NETGEAR M4350の新しい挑戦
大学時代、私は放送研究会に所属していた。
その伝手もあって、1年生の頃は舞台照明、2年生の頃は音響、そして3年生から4年生にかけては地方テレビ局でアルバイトをしていた。面白いことに、アルバイト先は年長者から順番に選んでいく仕組みだったため、自分の担当する機材も年々変わっていった。
最初に運んでいたのは、パーカンと呼ばれる鉄の塊のような照明器具。次第にPA用スピーカーや音響機材になり、その後はテレビ中継用のカメラケーブルへと変わっていった。
こうして振り返ると、担当する機材は年々軽くなっていた。
当時は経験や技術が評価された結果だと思っていた。
しかし年長者から仕事を選べる仕組みだったのだから、今になれば理由は明らかである。
重い機材ほど、新入生に近いところへ集まっていくのだ。
部活の後輩に求められるのは、まず「体力」なのだ。
先日、妻とカラオケへ行ったときのことだ。何気なく手に取った有線マイクを見て、思わず懐かしい気持ちになった。コネクタがXLRだったのである。
XLRコネクタは、放送や音響の世界にいた人間なら誰もが一度はお世話になる規格だ。3ピンによるバランス接続でノイズに強く、なにより特徴的なのがロック機構である。カチッと差し込めば、レバーを押さない限り抜けない。
私はそのコネクタを思わずまじまじと眺めていたらしく、妻からは「何をそんなに見ているの?」と不思議そうな顔をされた。しかし、あの丸く重厚な金属の感触は、何年経っても指先が覚えているものだ。
音響を担当していた学生時代、本番中にケーブルが抜けるというのは悪夢だった。
生放送や舞台公演では、誰かがケーブルに足を引っ掛けただけで音声が途切れる可能性がある。たった一瞬のトラブルが、本番全体を台無しにしてしまうこともある。だからこそ現場では「絶対に抜けない」ことが何より重要だった。
XLRコネクタは、そんな現場の信頼を支える存在だった。実際、先輩たちからも「XLRだから安心して引き回せる」とよく言われていたのを覚えている。
そんな記憶を思い返していた矢先、今年発表されたNETGEARの新しいM4350シリーズを見た。
中でも注目したのが M4350-16M4V である。


このモデルには、Neutrik®の etherCON® と powerCON® が採用されている。Neutrikといえば、まさにXLRコネクタの代表的なメーカー。そのNeutrikが培ってきた「抜けない」思想を、Ethernetや電源コネクタへ展開したのがetherCONやpowerCONだ。
etherCONはRJ45を保護する堅牢なロック機構を備え、ライブ会場や放送現場のような過酷な環境でもケーブル抜けを防ぐ。

powerCONも同様に、振動や人の往来が多い現場で確実な電源供給を実現するためのコネクタとして広く利用されている。

また、etherCON側の右パネルには標準でSFP28 x4を搭載する APM414V が装着されているが、オプションとして opticalCON QUAD 搭載の APM414SD(MMF)、APM414LD(SMF)、あるいはRJ45 x4を搭載する APM414C に交換することもできる。興味深いのは、光接続においてもNEUTRIK社の opticalCON® を採用できる点だ。XLRやetherCONと同様に、現場で信頼されてきた「抜けにくいコネクタ」という思想が、光ファイバー接続にまで貫かれているのである。

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| APM414V (標準搭載) 25/10GbE対応 SFP28 x4 |
APM414C 10/1G対応 4x 10GBASE-T |
APM414LD – opticalCON 25/10G対応 4x SMF |
APM414SD – opticalCON 25/10G対応 4x MMF |

NETGEARはこれまで、Dante®やAES67といったオーディオネットワーク向け規格への対応を進め、さらに映像に対応する SMPTE ST 2110にも対応することで、プロフェッショナルAV市場における存在感を着実に高めてきた。
しかし今回のM4350-16M4Vは単なる機能追加ではないように見える。
現場では「帯域が足りるか」や「設定が簡単か」も重要だが、それ以上に「本番中に動き続けるか」が重要である。実際のコンサートやライブ現場では、ネットワークケーブルや電源ケーブルが誤って抜けないことも大切な要件だ。
そう考えると、etherCON、opticalCON、そしてpowerCONの採用は非常に象徴的である。しかもetherCON側では2.5GbEにも対応し、近年増加する高帯域なAV-over-IP環境にも対応している。
学生時代に信頼していたXLRコネクタ。その精神を受け継ぐNeutrik製コネクタをネットワークスイッチに搭載したM4350-16M4Vを見ていると、NETGEARが単にAV市場向けの製品を作っているのではなく、「現場が本当に求めるもの」を理解した製品づくりへさらに踏み込んできたように感じる。
放送や音響の現場では、「速い」や「高性能」よりも先に「絶対に止まらない」が求められる。
そして、その思想を最もシンプルに表している言葉が、昔から現場で使われてきた「抜けない」という価値なのかもしれない。
Mt.
※ Neutrik、etherCON、powerCON、および opticalCONはNeutrik AGの登録商標または商標です。DanteはAudinate Group Limitedの登録商標です。その他本記事に記載されている会社名、製品名、サービス名等は、各社の商標または登録商標です。なお、本文中では必ずしも®や™などのマークを明記していない場合があります。



