SMPTE ST2110の成り立ちから見るNETGEAR ProAVシリーズ
- SMPTE ST2110成り立ちの歴史
従来の放送・映像制作の現場では、同軸ケーブルを用いて映像・音声データを伝送するSDI(Serial Digital Interface)規格が長年主役を務めていました。しかし、4K/8Kをはじめとする高解像度化やハイフレームレート化、システム規模の拡大に伴い、ケーブル配線の煩雑化や拡張性の限界といった課題が顕著になりました。
この課題を克服するため、汎用的なIPネットワーク上でメディアデータを伝送する「Video over IP(またはMedia over IP)」への移行が進められます。初期には映像・音声・メタデータを一括して伝送するSMPTE ST 2022-6などの規格が登場しましたが、編集の柔軟性に欠ける等の課題がありました。
これを受けて開発されたのが、2017年より順次標準化されたSMPTE ST 2110です。ST2110では、映像(ST 2110-20)、音声(ST 2110-30)、メタデータ(ST 2110-40)を独立したエレメンタリーストリーム(Essence)に分離し、PTP(Precision Time Protocol / SMPTE ST 2059)によってマイクロ秒単位で高精度に同期させる方式が採用されました。これにより、個別のストリームを自由にルーティング・編集できる高い柔軟性と、効率的な帯域運用が実現し、次世代の放送・映像制作インフラの国際標準として定着しました。

- NETGEAR ProAVシリーズリリースの背景
SMPTE ST2110やDante、NDIといったAV over IP技術の普及により、映像・音声インフラはITネットワーク機器への依存度を一層高めました。しかし、高品質なメディア伝送を行うには、一般的なIT用ネットワークスイッチに対し、PTPの時間同期設定、IGMP Snoopingやマルチキャストルーティング、帯域制御(QoS)といった高度なネットワーク設定が求められます。
従来のIT用スイッチではコマンドライン操作(CLI)による複雑な手動設定が必要であり、ネットワークの専門知識を持たないAVエンジニアや現場の映像スタッフにとって大きなハードルとなっていました。
この「AV業界におけるIP化の加速」と「ITネットワーク設定の難易度の高さ」というギャップを埋めるべく、NETGEARが市場へ投入したのがProAVシリーズです。AV利用に最適化されたポート設計やハードウェア構成を備え、ネットワーク知識に大きく依存しない信頼性の高いAV over IP環境を迅速に構築できるスイッチとして誕生しました。特にM4350シリーズにはST2110に対応するモデルがラインナップされています。

- ST2110環境における専用GUIツール「Engage」の利点
NETGEAR ProAVシリーズの最大の特長の一つが、無償で提供されるネットワーク管理ソフトウェア(GUIツール)「NETGEAR Engage」の存在です。特に緻密な設定が要求されるST2110環境において、Engageは以下のような大きなメリットをもたらします。
- ワンタップで適用できる「AVプロファイル」
ST2110をはじめ、DanteやNDI、PTP設定などに最適化されたプロファイルが事前定義されています。ポート単位で対象のプロファイルを選択するだけで、PTP同期やVLAN、マルチキャストの設定が自動で一括適用されるため、複雑なCLIコマンドを入力する必要がありません。
- 視覚的で直感的なネットワーク構成管理
接続されたスイッチやAVデバイスを自動検出し、グラフィカルな画面でネットワーク全体の接続状態や帯域利用状況を可視化します。トラブルシューティング時も問題のポートやストリームを容易に特定できます。
- 複数スイッチの一括設定と導入時間の短縮
大規模なST2110システム構築時でも、複数台のProAVスイッチに対して一括でプロファイル適用やファームウェアアップデートを行えるため、現場での設営・構築コストを大幅に削減します。

その他にも仮想サイトを使って、各ProAVスイッチの操作・設定の確認や複数スイッチを接続してトポロジを構築して設計の確認、予行演習ができる「オフライン・プロビジョニング機能」の提供など、NETGEAR ProAVシリーズとEngageソフトウェアは、高度な知識や経験を要するST2110ネットワークの構築・運用ハードルを劇的に下げ、放送・映像制作現場のIP化を力強く支援します。