AI時代のMacが変える高速接続の世界
RDMA over Thunderbolt™の登場とATTO ThunderLink®が担う新たな役割
- この記事のポイント
- macOS®での「RDMA over Thunderbolt」登場により、複数台のMacを高速結線したAIクラスタ構築が可能に。
- クラスタ内部の高速通信(RDMA)と、外部ストレージ(100GbE/FC)の役割分担が重要。
- ATTO ThunderLink 5000シリーズ(Dual 100GbE等)が、Mac AIクラスタとエンタープライズ基盤をつなぐ鍵となる。
Apple Silicon®の登場によって、Mac®は従来のクリエイター向けワークステーションという枠を超え、AI開発や推論を実行するためのプラットフォームとしても利用されるようになりました。
特にMac Studio®は、大容量のユニファイドメモリを活用できることから、大規模言語モデル(LLM)をローカル環境で実行したい研究者やエンジニアから注目を集めています。近年はその流れがさらに加速しており、最新世代では最大512GBのユニファイドメモリを搭載可能になるなど、Mac単体で扱えるAIワークロードの規模も大きく拡大しています。Apple自身も、ローカルAIや分散AI推論をMacの重要な活用分野として位置付けるようになっています。
こうした中、AppleはmacOSにおいて、Apple SiliconとThunderbolt 5搭載Mac向けの「RDMA over Thunderbolt」を提供開始しました。これは単なる周辺機器接続の高速化ではなく、複数のMacを低遅延で接続し、ひとつのクラスタとして活用するための新しい通信基盤です。
Appleの技術文書1によれば、RDMA over ThunderboltはThunderboltコントローラに対してRDMA(Remote Direct Memory Access)Verbs互換のインターフェイスを提供します。これによりアプリケーションはThunderboltハードウェアの性能を直接活用しながら、低遅延かつ低オーバーヘッドな通信を実現できるようになります。

従来のTCP/IPベースの通信では、OSのネットワークスタックを経由するため、CPUによる処理やメモリコピーが発生します。一方RDMAでは、それらの介在を最小限に抑えながら相手ノードのメモリへアクセスできるため、レイテンシの削減とCPU負荷の軽減が期待できます。Appleも従来のIP over Thunderboltと比較して、RDMA over Thunderboltがより低レイテンシかつ低オーバーヘッドな通信方式であると説明しています。
RDMA over Thunderboltの価値は、帯域幅の数値そのものではありません。本質的な変化は、Mac同士を低遅延なインターコネクトで接続し、複数のシステムを協調動作させる土台が整ったことにあります。
Appleは最新のMac Studio発表において、Thunderbolt 5とRDMAを活用した分散AI推論を公式に訴求しています。さらに4台のMac Studioを接続したクラスタ構成では、単体システムと比較して最大3倍の推論性能向上が期待できると説明しています。
また、Appleが公開している技術資料1では複数のMac miniを接続した構成例も紹介されています。これまでのMacは高性能な単体システムとして語られることが多くありましたが、今後は複数のMacを連携させる分散コンピューティング基盤としての活用も現実味を帯びてきました。
もちろん、分散推論の性能は利用するモデルや並列化方式によって大きく左右されます。しかし、多くのAIワークロードでは帯域幅だけでなく通信レイテンシも重要な性能要素となります。特にノード間で頻繁に中間データを受け渡す処理においては、RDMAによる通信遅延の削減が有効に働く可能性があります。その意味で、RDMA over ThunderboltはMacベースの小規模AIクラスタに新しい選択肢をもたらしたと言えるでしょう。
一方で、実際のAI環境において重要なのはノード間通信だけではありません。モデルファイルや学習データ、推論時に利用する各種データセットなどを効率よく扱うためには、共有ストレージとの連携も欠かせません。
近年のAI基盤では、VAST Data®、NetApp®、WEKA®といった共有ストレージを利用するケースが増えています。こうした環境では100GbE以上の高速EthernetやFibre Channelが利用されることも珍しくありません。
ここで興味深いのは、RDMA over ThunderboltとATTO® ThunderLink®が競合する技術ではなく、むしろ補完関係にあるということです。
RDMA over Thunderboltが担うのはMacクラスタ内部の通信です。一方で共有ストレージや既存のネットワークインフラとの接続には、引き続きEthernetやFibre Channelが必要になります。
最新のMac Studioにも10Gb Ethernetは標準搭載されていますが、それ以上の帯域が求められる環境では外部インターフェイスの活用が現実的な選択肢になります。
そこで注目されるのがATTO社のThunderLinkシリーズです。

ATTOはThunderbolt接続をエンタープライズ向けネットワークやストレージ技術へ変換するソリューションを展開しており、Thunderbolt 5対応の最新製品ではDual 100GbEや64Gb Fibre Channel接続を提供しています。例えばThunderLink NS 5102は、Thunderbolt 5ポートをDual 100Gb Ethernetへ接続するためのアダプタとして提供されています。
これによりMacベースのAI環境から、高速共有ストレージやAIデータレイク、あるいは既存の高性能ネットワーク基盤へ柔軟に接続できるようになります。
これまでThunderboltは、高速ストレージや映像機器を接続するためのインターフェイスとして語られることが一般的でした。しかしRDMA over Thunderboltの登場によって、その役割は周辺機器接続からノード間インターコネクトへと広がり始めています。
AppleがMacクラスタによる分散AI処理を本格的に視野に入れ始めたことで、ThunderboltはMac同士をつなぐ通信基盤としての役割を担うようになりました。そしてその外側では、共有ストレージや既存ネットワークとの接続をEthernetやFibre Channelが支えるという役割分担が見えてきます。
そう考えると、ThunderLinkは単なる変換アダプタではありません。Macクラスタとエンタープライズ向けストレージやネットワークを結び付ける接続基盤として、今後さらに重要な役割を担う可能性があります。Macを中心としたAIインフラが拡大するにつれ、その価値はますます高まっていくのではないでしょうか。
関連リンク
● ATTO Thunderbolt対応 ThunderLink シリーズ製品
● ATTO社による、Thunderbolt 5技術概要
※ Apple、Apple ロゴ、Apple Silicon、macOS、Mac Studio、Mac miniは米国および他の国々で登録された Apple Inc. の登録商標あるいは、商標です。Thunderbolt及び、Thunderboltロゴは、米国およびその他の国におけるIntel Corporationの登録商標または商標です。その他記載の会社名、製品名およびサービス名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。