LIQID CXLソリューション製品概要(1)CXLとは?
LIQID CXLソリューション製品概要(1) CXLとは?
本年7月にLIQIDからCXL2.0対応製品が発表されました。これまでLIQIDと言えばGPUなどのPCIeデバイスをプール化して、そこから必要なデバイスを動的にコンポーズしてベアメタルサーバを再構成できるCDI(Composable Disaggregated Infrastructure)製品でしたが、今回発表された新製品は、このCDI製品を正常進化させ、動的再構成の対象としてDRAM(CXLメモリ)を加えた業界最先端の製品です。
このコラムでは、最初に同製品の基礎技術になっているCXLについて概観し、LIQID CXLソリューション製品のご紹介、ユースケース、今後のビジョン等について記したいと考えています。
第一回では、あまり技術的な細部に入ることはせずに、CXLの出自や、CXLを取り巻く業界の動向、現在リリースされている具体的な対応製品などについてご紹介いたします。
1. DRAM市場の動向
AI花盛りの昨今ですが、この発展にはいくつかの要素技術の進化が寄与していると言われています。その一つはGPUであり、過去数年急拡大したAI需要を下支えにGPUの利用が大幅に浸透したため、供給とのバランスが崩れNvidiaの正規パートナーである弊社でも入手に随分苦労する時期がありました。AI向けのGPUは通常データセンタ等のサーバに搭載して使用するため、GPU同様サーバおよびサーバに搭載される部品の需要も拡大し、その恩恵に浴した部品の一つがメモリ(DRAM)でありました。そのように主要部品として需要が拡大したDRAMですが、同時に、ユーザーからはにその採用、使用に関連して以下のような課題が挙げられるようになっていました。
- DRAMはデータセンター機器の中で最も高価な資源の一つ
- DRAMは非常に大きな消費電力を必要とする
- 将来の必要サイズを予測するのが極めて困難
- 一般的にはデータセンターのメモリー使用率は低率
2. CXLとは?
業界としては、上述したような課題解決にはコンピュータ・メモリの技術革新が必須であることが認識され、そのための一つのアプローチとしてこのコラムで取り上げるCXLが考案されました。
CXLはCompute eXpress Linkの略で、簡単に言うと、CPU、 GPUおよびDRAM間の高速・低レイテンシーなインターコネクトの新しい標準規格であり、下図のような企業が標準化に取り組んできています。CXLプロトコルはPCIe物理層の上位にあり、PCIeの導入実績と互換性を有効活用し、AIなど今日のワークロードに適合する機能と性能を提供することが可能です。

CXLの特長を挙げると以下のようになります。具体的には従来のサーバ・メモリが抱えていた制限・制約を解消し、より広範なメモリ実装方法の選択肢を提供し、低コストで高性能なメモリをより柔軟に活用することを可能にすることを目指しています。最もイメージしやすいのは、単純にサーバのメモリ容量を拡張することでしょうか。マザーボード上のすべてのメモリスロットにDIMMが導入されている場合でも、それらの既存資産を無駄にすることなくPCIe接続のCXLメモリを追加することが可能です。別の記事で触れる予定ですが、より高度な使用方法として、PCIeファブリックに接続された複数のホスト間でCXLメモリを共有(共用)することも可能です。

3. CXLとPCIe
さて、先にCXLプロトコルはPCIe物理層の上位にあると書きましたが、この二つがどのように発展していくか下のロードマップでご覧いただけます。現在、業界では各種メーカからCXL2.0対応製品がリリースされており、標準化団体であるCXLコンソーシアムでは相互接続性試験を行う会合が定期的に行われています。

4. CXLメモリ製品
CXL2.0対応としてすでに投入されている代表的な製品としてCXLメモリがあります。CXLメモリはPCIeバスを介して実装するメモリで、一般的なマザーボード上にあるメモリスロットに導入するDRAM(DIMM)とは異なります。下図は、一例としてSamsung、Micron、SK Hynix、Smart ModularのCXLメモリ製品の画像を示していますが、CXLメモリの代表的はフォームファクタがE3.Sであることがわかります。それ以外にAIC(Add-in-Card)タイプのものも見られ、製品によっては自分でDIMMの差し替えが可能で、必要に応じて容量を拡大することができる仕様のものもあります。

5. CXLメモリのレイテンシー性能
またCXLメモリがどれくらいのレイテンシー性能を誇るのか、サーバで用いられるストレージデバイスのヒエラルキーの中での位置付けを下図で見ることができます(参考)。これを見ると、マザーボードのメモリスロットに搭載されるDRAMよりは劣るものの、SSD(NVMe)と比較すると100倍のオーダでレイテンシ性能が改善されることが期待され、これにより性能改善が有効なアプリケーションでは威力を発揮することが期待されます。

今回はLIQID CXLソリューション概要(1)としてCXL技術の出自や業界動向などを概観いたしました。次回は、CXLメモリの登場により期待が寄せられる新しいメモリの実装方法のバリエーションおよび具体的なLIQID CXLソシューション製品についてご紹介したいと思います。
(MF)